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過食症を経て、一つ一つの日常を見つめる記


by jengsauman

なんでヨッシーの夢を見たんだろう。
彼は私のことを覚えてないと思うけど、
あたしも彼のこと忘れてた。
5年前くらいに参加した大学のサマープログラム。
あの時、たくさんの他キャンパスの人とであった。
彼はその一人で、とても頭が良かった。
というか、全員が猛者すぎて、私はテンパリすぎていた。

みんなとても視野が広くて、そのスタンスも格好よかった。
そこにガツガツ入っていく勇気もなかったし、余裕すらなかった。
みんなはうまく論文をこなして、遊びにいっているのに、
あたしは部屋に閉じこもって辞書をひきたおしていた。
とっても不毛であほだった。
日曜のあさっぱらからこっそりフラットを出て、近くのお店に
行って、キャドバリーのチョコレートを大量に買った。
マクビティの時もあった。両方の時もあった。

ディスカッションの同じクラスにYという女の子がいた。
同じ学部学科だったのに、初めて会った子だった。
とても眼が大きくて、おしゃれで、主張もしっかりしていて、
それでいて人を褒めるし、フランクな感じが人をひきつけた。
彼女は誰も見向きもしないあたしに対してさえ、
つたない正論を褒めてくれたりした。
帰国後、彼女は他学部のゼミに入ったと聞いた。
どこまでも自分の道を突き進む姿が、心底羨ましかった。

Yは男の子にとてももてていた。
そのうちの一人がヨッシーだった。
あたしは別にヨッシーが好きだったわけでもないし、
仲良かったわけでもないのに、なぜだかそのことをとても
覚えていた。何でYはあんなにもてるんだろう、と思っていた。

同じプログラムに参加したYさんという女性が居た。
同じく、他キャンパスの人で、とても聡明な人だったけれど、
見た目はとても地味な人だった。帰国子女で英語にも長けていて
TAたちとの交流にも支障がないようだった。
彼女は、化粧もあまりせず、なんとなく
ちょっと光浦靖子っぽかった(←ごめんなさい)。
あたしは、彼女と話すことさえあまりなかったので、
内面がどれほど魅力的かなんて知るよしもなかった。
知ろうともしなかった。
外見しか見ていなかった。
けど、帰国後、Yさんが一番人気があったTAのPと婚約した
という話を聞いたとき、大ショックだった。
きっとPはYさんのことをちゃんと見ていたのだろう。
そして、Yさんはちゃんと自分を表現する術を持っていたのだろう。
英語とか、フランス語とか、そういうことではなく、
自分とはどういう人間か、自分は何をどう思うか、を
人に押し付けることなく主張し、また相手のそれを受け入れる術を。
数年経ってやっとその意味が分かった自分が情けない。

Yさんの親友にEさんという女性が居た。
Eさんも優秀な人で、クラスが同じになることもなかったので、
最後まであまり話す機会がなかった。
でも、とっても印象に残っている素敵な人だった。
なんというか、包容力と、知性と、笑顔を持っているような。

同じ学科の先輩が一人だけ居た。
Fさんという人。
とっても面白くて、気さくで、いい人だった。
私が入りたいといっていたゼミに所属していたので、その話も
よくしてくれた。(結局、落ちたのだけど・・・)
Fさんはこのプログラム参加者の中で一番フェアに見えた。
性別に関係なく、みんなにフェアだった。そんなFさんのそばに
いるときが一番安心できたし、樂だった。
でも、帰国後、あたしは自分がゼミに落ちたことが恥ずかしくて、
Fさんと疎遠になってしまった。
なんて惜しいことをしたのだろう。
なんてちっちぇえ人間だったのだろう。
そんなことを糧にさえできないやつはどこに所属したって
だめなんだ。

出発前のオリエンテーションで最初に仲良くなったのがYだった。
彼は熱い人間だった。あたしはいい調子でそれに合わせていたら、
結構いい感じで仲良くなれたようにみえた。
けど、それは上っ面だったから、すぐにばれた。すぐに彼は離れていった。
人が自分に失望して自分のそばから離れていく様子を見るのが
恐ろしいけれど、よくそういう場面を見た。
きっと自分だけじゃないと思う。誰ともうまく行く人なんていない。
だから、そのときどう対処するか、が大切だったのだろう。
変えられるところはちゃんと学習して変えないと、一生同じだと
いうことに気づくにもいたらなかった。痛い現実を見たくなくて、
ただおびえていた。

Fさんのような人と、議論したり、あほなことを言っているときは樂だった。
自分が女であることを意識せずに済んだし、女としての自分が
魅力的でないことで話してもらえないという心配もせずに済んだ。
けど、いつもどこかで女としての自分を見てほしいと思っていた。
ヨッシーもそうだったし、ほかにももっと話したい人がたくさんいた。
論文も適当にやって、化粧や男や遊ぶことばかり話しているフラットメイト
に吐き気をもよおしていたのに、どこかでそれが羨ましかったのだろう。
そんな彼女たちとばったり会うのも嫌で、ましてや過食するものを
大量に買ってきた後に会ったりしたら、と思うと、いつも出かけるのでさえ
億劫だった。隣の部屋からみんなの笑い声が聞こえてくると、
私はよく食べ物を詰め込んだ。

私が仲良くしていた女の子たちは、とてもまじめで、日本に彼氏も居て、
とても落ち着いている人たちだった。別に遊びにきたわけではないし、
でも頑なに勉強にこだわっているわけでもない。自分たちで楽しもうよ、
という感じだった。刺激も少なければ、リスクも少なかった。

そんなあの数ヶ月を思い出すたびに、私は胸の中が締め付けられる。
何もチャレンジしなかった。
何も変えようとしなかった。
そして誰ともぶつからなかった。
今思えばそんな人間に誰がパッションを感じるだろうか、という
単純な話なのだけど、あのときは、ただ自分を認めてほしい欲で
思考停止状態だった。自分のつまらないプライドが、自分の世界を
広げなかったに過ぎない。

とても素敵な出会いがあっても、それを生かせない人、そのものだった。

そして自分が魅力的だと感じた人は総じて、自分らしさを持っていた。

帰国後、大学のPCアドレスがおかしくなって、それ以来MLのメールが
こなくなった。管理者をしていた人が、話したこともない人だったので、連絡も
しなかった。時々、友達が飲み会を教えてくれたけど、1回行ってからは
一度も行っていない。あのプログラムのことを記憶から消したいと思っていた。

けれど、先週の日曜日、新宿東口で友達を待ってたら、
遠くにそのプログラムの友達ととても似た人が立っていた。
別の友達と一緒に居てとても話し込んでいる様子だったから
話しかけようか、どうしようか、とても迷ったけれど、そのとき私の友達が
きたので、その場は離れた。でもずっと頭の中に残っていた。

そのプログラムに参加した人のうち、私以外全員、
きっと社会の中枢に何かしら関わっているのではないかと思う。
正直、それがとても怖い。しかし、だからどうというんじゃなくて、
そんな生き方を放棄したところで
あたしにはあたしの生き方がある、と言ったところで、
誰も聞いちゃくれない。
あのころの自分を反駁しなければ何の意味も前進もありえないのだ。
誰にも勝つことなんてできない。表面上、勝ったように見えても、
勝ち負けなんて自分の心の中の思い込みだ。
負けても糧にできれば、勝ったつもりで甘えている人よりも前に
進めているかもしれないし、そもそもその比較自体がナンセンスだ。
何を考えました、ではなくて、何をしました、がないと
何も語れない。
どこに所属しています、じゃなくて何をしています、がないと
何も語れない。

だから、私はあのプログラムのことを人に話したことがない。
きっと、私が何もクリエイトしなかったから、語ることがなかっただけだ。
どんなに意義あるものでも、それを自分が自分なりに消化しないと
何も語れない。

なんだか、とてもヨッシーに会いたくなった。
みんながどういう風に輝いているのか、見てみたくなった。
全く違う世界で生きているとしても、それは彼らの行動が作ったものなはずだから、
その行動力と努力に触れてみたい。
でも、今の自分じゃ、格好悪すぎる(笑。
せめて、自分でGOサインを出せるまでには前進したい。
それもまたちっちぇえ自分の証拠かな(笑。
でも今なら、自分の思うことを少しは話せる気がするし、
それが聞いてもらえなければ、ただ合わなかったと思えばいいだけの話だ。

Yがモテモテだったのは、Yがかわいかったからだけではない。
彼女は彼女の言葉を持っていた。
私は私の言葉を放てるようになるまで失敗を繰り返さないと
いけない。

なんて考えてると、自分の視野が狭くなりすぎていたことに気づく。
自分のまわりにはいろんな世界が存在してるんだね。

Yes or Noではない。
自己信頼が揺らいだとき、他者からの評価に逃げる割合を
減らせばいいのだ。両方が必要なことで、自分がよければそれで
いいわけでもない。自分で自分を信じても、誰も信用してくれないよう
では意味がない。内面と外見だって両方大切で、その割合が人によって
違うだけ。その割合の価値観が合う人と一緒に居ればいい。

自分を殺して責められないことが安全ならば、そんな安全の中で
これ以上生きている意味はあるのか?

筋肉破壊のように、ちょっとだけキャパをオーバーして、
それを新しい筋肉にしていけるような、そういう人との関わり方を
してみたい。同じ場所に留まっていてはいけないし、
同じ人の環境に留まっていても勿体無い。

目の前を一個一個実にしていこう。
by jengsauman | 2006-01-27 14:28